STORY

世界チャンピオン

ヨーヨーブームは2年ほどで沈静化しましたが、私のヨーヨー熱は冷めるどころか、その勢いを増していました。

ブーム中は持ち前の不器用さも相まって技の習得が遅く「下手の横好き」そのものでしたが、ヨーヨー歴が3年を迎えた頃には徐々に頭角を現し、全国大会にも出場するようになりました。

そして2001年、ついに日本の全国大会で優勝。さらには米国フロリダ州オーランドで開催された世界大会で優勝し、念願だった世界チャンピオンになることが出来たのです。

気付けばヨーヨーを始めてから4年が経過し、練習時間は10,000時間に達していました。青春時代を全て捧げてきた努力が報われた瞬間でした。

「やった!これで僕もチャンピオンだ!カッコいいヒーローになれたんだ!」

実際、大会翌日にオーランドのショッピングモールを歩いていると「お、昨日優勝したチャンピオンですね!」と通行人の方から声をかけられたりもして、私はもう有頂天。

しかし日本へ帰ると、当然のことながらそんなヒーロー扱いは一切ありませんでした。空港に取材陣が押し寄せることもなく、高額の賞金を手にしたわけでもない。

私は普通の冴えない大学生に戻っただけでした。

「オレ、すごい頑張ったはずなのに、チャンピオンになっても何も変わらないのか...? 」

無論、賞金や栄誉のためにヨーヨーに取り組んでいたのではありません。「オレが世界で一番ヨーヨーが上手いんだ!それを証明してやる!」そう意気込んで臨んだ世界大会でした。そしてそれは、願った通り証明されました。

しかしヨーヨーを始めた当初期待していた、「ヨーヨーが上手くなったら、自分もカッコいいヒーローになれるかもしれない」。これはあくまでブーム中の偶像に過ぎず、実際には、世界チャンピオンになっても一般社会からヒーロー扱いを受けることは無かったのです。

ひたすら夢に向かって突き進んでいた私でしたが、これを機にヨーヨーに対する情熱は徐々に失われていきました。

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