STORY

ダメ社員の烙印

システムエンジニアとして一般企業に就職した私は、絵にかいたような「ダメ社員」になりました。

企業理念への共感や業務内容への強い興味から入社先を選んだのではなく、「就活を早く終わらせたいから、最初に内定をくれたところでいいや」そんな理由で選んだことが原因です。

業務を通じた自己実現の目標や社会貢献の意識なども全くありません。

当然、日々の仕事に熱意を持てるわけもなく、「キミはダメだね、チャンピオン」と上司からハッキリ言われたこともありました。

また、好きでもない事に限られた人生の貴重な時間を割いているという事実は、私の心と体を蝕んでいきました。

慢性的な体調不良や、手に力が入らず味噌汁の入ったお椀をひっくり返してしまったことも1度や2度ではありません。

毎日が、苦痛でしかありませんでした。

「自分は会社の役にも立っていないし、自分自身も楽しくない」

「全く生きている価値のない人間だな」

いつもそう思っていました。

「こんな死んでいるような生き方は嫌だ」

「生きたい」

そう思った私は、この環境から逃げるべく、まずは転職を検討しました。

そして、転職活動にあたり相談したエージェントの方に勧められた「適職診断」が、私の運命を大きく変えたのです。

それは、「人生の棚卸をする」という作業でした。自分がこれまで経験してきたことの中で、嬉しかったこと。悲しかったこと。

感情が揺れ動いた経験を書き出し、それらの共通項を見つけることで、「私は何に喜びを感じるのか」「何をしたくないのか」を明確にし、適した職種・勤務先を紹介してくださる、といった流れになるはずでした。

そこで私が気づいたのは、「自分はヒーローになりたかったのだ」という事実でした。

幼少期、いじめられっ子だった私が好んで見ていたTV番組「仮面ライダー」。作品内では、困っている人はヒーローによって助けてもらえます。しかし現実世界には、いじめられている私を救ってくれるヒーローはいませんでした。

「なんで僕を救ってくれるヒーローはいないの?こんな世界間違ってる!」

幼い私は、そう心の中で叫んでいました。

そして、

「それならば自分がヒーローになって、間違った世界を変えたい!」

そんな考えが心のどこかで育っていたのだと、この棚卸で気づいたのです。

自分にできる、人助け。真っ先に思いついたのは、自分を育ててくれたヨーヨーでした。

自分が世界チャンピオンになっても社会的評価が伴わなかったのと同様に、後輩のチャンピオンたちもまた、十分に評価されているとは言い難い状況が続いていたのです。

「自分がヒーローとして、この状況を改善することはできないだろうか」

「もし、シルク・ドゥ・ソレイユのような社会的評価の高い場所にヨーヨーで出演することが出来たら、ヨーヨーのイメージを変えられるのではないか?」

そんな突拍子もない考えが芽生えてきたのです。

もちろん、決して簡単ではないことは容易に想像がつきました。

「たぶん無理・・・かもしれないな・・・」
そんな思いも、正直ありました。

それでも、ようやく「生きた人生」を取り戻せる、生きがいを感じられる夢と出会えたと感じたのです。

会社員としての転職ではなく、パフォーマーとしての独立。
シルク・ドゥ・ソレイユ出演を目指して。

それが、私の出した結論でした。

2007年4月、私は会社を辞め、プロパフォーマーとして独立しました。

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